東京地方裁判所 昭和46年(借チ)18号 決定
〔主文〕1 申立人と相手方らとの間の別紙目録記載の土地に関する賃貸借契約の借地条件を次のとおり変更する。
(一) 土地の使用目的を堅固建物所有とする。
(二) 賃料を本裁判確定の日の属する月の翌月分から3.3平方米当り一ケ月四〇〇円とする。
(三) 存続期間の終期を本裁判確定の日から三〇年後とする。
2 申立人は、相手方らに対し、金四二四万円の支払をせよ。
〔理由〕(申立の要旨)
申立人は、相手方らから別紙目録記載の土地(以下本件土地という)を非堅固建物所有の目的で賃借中のところ、同地上に所有する家屋番号五六番二一木造瓦葺平家建店舗兼居宅床面積50.41平方米(以下本件建物という)を取り毀し、これを堅固建物に改築すべく計画したが、土地の使用目的を堅固建物所有に変更することにつき相手方らと協議が調わないので、右変更の裁判を求める。
(決定理由)
1 本件の資料によると、申立人は、申立外西野孝次郎が終戦前申立外荒川半蔵から非堅固建物所有の目的で賃借した本件土地(実測は128.163平方米)の借地権及び本件建物所有権を昭和三六年七月一三日賃貸人荒川半蔵の承諾を得て譲り受け、その際、借地期間を同日から二八年と定めたこと、賃料は、昭和四一年四月分から一ケ月九五七〇円に改められ、現在にいたつていること及び本件土地附近は、本件借地権設定当時は殆どの建物が木造であつたが、その後防火地域、第七種容積地区の指定を受け、本件土地の接面する甲州街道の拡幅工事に伴い、堅固高層の建物が次々に建築されつつあることが認められるので、附近の土地の右利用状況の変化に鑑み、現に借地権を設定する場合、土地の使用目的を堅固建物所有とするのが相当であり、本件申立は、これを許容すべきである。
2 附随処分
本件申立が許容されることにより、申立人は、本件土地を最有効に使用することが可能となり、鑑定委員会の意見によると、最有効使用に相応しい建物は六、七階程度であるとのことである。申立人がこのような建物を建築し、それを利用すると、得られる収益は従前より増加するのは明らかである。収益は、賃料の源泉である一方、不動産価格形成の要素の一である効用に影響するので、収益増は、賃料増額の要因となり、また、借地権価格増加の要因となる。この借地価格の増加分は、土地の使用目的変更という権利内容修正の対価と見られるので、右増加分相当額を相手方に支払うよう申立人に命ずるのが相当である。鑑定委員会は、現在の本件借地権価格は、本件建物が比較的粗雑な建築物であり、補修の不備もあつて老朽化が進み、現在物置として使用されており、早晩改築の要があることを考慮して、通常の非堅固建物所有目的の借地権価格より低くて然るべきであるとの判断から、通常の借地権価格の更地価格に対する比率は七〇%であるが、本件の場合は六七%であるとし、本件借地権の使用目的が堅固建物所有目的に変更された場合の借地権価格の更地価格に対する比率は八〇%であるので、本件借地権価格の増加分を更地価格の一三とする。右意見を尊重し、財産上の給付を鑑定委員会の評価する本件土地の更地価格(一平方米当り二五万四七〇〇円)の約一三%に当る四二四万円とする。
鑑定委員会は、賃料を3.3平方米当り一ケ月二八〇円に改めるのを相当とするというが、同委員会提出の意見書によれば、近隣の非堅固建物所有目的の借地契約の継続賃料がおおむね3.3平方米当り一ケ月三〇〇円であるというのであるから、使用目的変更による収益増を考慮に入れるとき、右改訂賃料は低きに過ぎるように思われる。相手方提出の不動産鑑定士水野英一作成にかかる鑑定評価書によると、本件土地附近の堅固建物所有目的の借地契約の賃料が3.3平方米当り一ケ月八〇〇円であるので、本件の賃料も右と同額に改訂するのが相当であるとしている。同鑑定士の調査した附近の右賃料というのは、右評価書によれば、昭和四四年あるいは昭和四六年に新規に設定された借地契約の賃料であり、新規設定の賃料は継続賃料より上回る傾向にあり(賃料の源泉は借地人の収益ないし収入に求めるべく、地価に求めるべきでないので、新規賃料と継続賃料との間に差を設ける合理的理由はないと思われるが)、右額は、実際支払賃料の底地価格ないし更地価格に対する比率の実情からすれば高額であるので、本件賃料を3.3平方米当り一ケ月四〇〇円に改訂するのが実情に相応しいものと考える。
本件申立の許容により、申立人は多大の利益を受けることになるので、それとの権衡上、借地期間の変更は相手方らの不利益にならないように考慮すべく、存続期間の終期を本裁判確定の日から三〇年延長することとする。 (小山俊彦)
目録
東京都渋谷区笹塚一丁目五六番九
宅地 359.34平方米のうち120.49平方米
(三六坪四合五勺)